
ワードローブ内部は、閉じた空間であると同時に、衣服という柔らかい素材を毎日扱う作業空間でもあります。光源を後付けで考えるか、最初に仕込むかで、十年後の見え方はまるで変わります。フレンチラグジュアリーでは 2700K 前後の電球色、アmericanラグジュアリーでは 3000K の中間色、ポストモダンでは 3500K のやや白い光が定番です。
フレンチの意匠は「陰影」を楽しみ、americanは「明るさ」を主張し、ポストモダンは「色の再現性」を重視します。光源の選択がスタイル別の最上位設計になる理由はここにあります。

東京のタワーマンションは内法 800×1350 mm 前後が多く、大阪・名古屋の築 20 年を超える中層マンションは 750×1300 mm にとどまります。ワードローブの本体は分解が前提で、最大扉幅 60 cm、最大奥行 55 cm、最大高 240 cm を 1 ユニットとして、計 4 ユニットで 240×220×55 cm を構築するのが現実解です。
搬入経路 80 cm が確保できないマンションでは、片開き扉から引き戸、内部はハンガー+浅抽屉という構成が、日本の住宅事情とワードローブの両立役になります。

名古屋・大阪の木造二階建てで多い階段は、有効幅 750 mm、蹴上 200 mm、踏面 240 mm です。踊り場が 900×900 mm あれば、高さ 220 cm の扉パネルを傾けて通せます。逆に、踊り場が 750 mm しかない住宅では、扉を 190 cm に切り詰めるか、廊下経由で搬入する経路変更が必要です。
戸建の階段は「寸法が読めない」と諦める前に、養生パネルと仮組で 30 分のリハーサルを行うと、運送会社の判断も家主の判断も明確になります。
東京の冬は 40% 前後まで下がる一方、夏は 70% を超えます。名古屋は内陸性が高く、大阪は梅雨期に 80% に達する年も珍しくありません。無垢オークは幅方向で含水率 1% 変化あたり 0.22%、ウォルナットは 0.18% 膨張するため、9 枚の扉が並ぶ 180 cm 幅では、最大 3.5 mm の隙間変動が起こります。
フレンチスタイルが「動き」を許容し、ポストモダンは膨張反動調整金具で制御する。americanは集成と無垢のハイブリッドで、両者の中庸を狙います。
| スタイル | 主材 | 扉仕上げ | 内部ユニット | 参考価格(JPY・240幅) |
|---|---|---|---|---|
| フレンチ | オーク無垢 + ブナ集成 | 框組 + 鏡面ガラス | 桐引き出し 4 段 | 780,000〜1,120,000 |
| american | ウォルナット無垢 + 楓集成 | フラッシュ鏡板 | セン+桐混合 | 650,000〜950,000 |
| ポストモダン | オーク集成 + 金属枠 | 突板 + ヘアライン | メラノ化粧板 | 520,000〜780,000 |
価格差は扉の仕様から生まれ、内部ユニットの差は意外と小さい。フレンチが框組に人手をかけ、americanは突板の挽き目に、postmodernは金属との接合にコストを寄せます。
soft close 付き蝶番は、10 万回開閉で 85% が閉じ速度を維持します。日本のファミリー世帯で一日 8 回開閉すると、34 年相当。把手なし(プッシュラッチ)はデザイン優先の postmoder nで多用されますが、内部のワイヤーが 5〜7 年でへたり、修理費は 18,000〜24,000 JPY が目安です。
開閉 5 万回を境に、把手の有無はコストではなく「触感」で選ぶべき要素に変わります。
寝室 6 畳(270×360 cm)では、ワードローブ 240×55 cm を壁面に置くと、ベッドフレーム 160×200 cm を対面に配置したときの中央動線が 90 cm を下回ります。6 畳ではワードローブを 180 cm に切り詰め、ベッドフレームは 140×195 cm に変更することで、初めて 90 cm を確保できます。
動線 90 cm は「歩く」動作ではなく「更衣する」動作の最低寸法です。フランスではこれを「パス・デ・プラス」と呼びます。
納品から 5 年目に最も多い相談は、蝶番のビス緩みと扉の微細な反りです。年に 1 回、ドライバーで 2.5 mm の六角ビスを締め直すと、soft close の寿命が 3 年延びます。扉の反りは、サッシに対して 1 mm 以内であれば許容範囲です。
10 年後の点検費用は 12,000〜18,000 JPY が目安です。構造 10 年保固を掲げる MIDHILL のような佛山の実木工廠は、こうした定期点検の前提となる含水率管理を、工場出荷時に 9〜11% に統制しています。
無垢オークのワードローブは、解体後に再研磨すれば 30〜45% の価値で再販できます。鉄骨補強入りの postmoder n は、骨材がスクラップとして 1 kg あたり 80〜120 JPY で評価されるため、解体費用と相殺されるケースもあります。
20 年後の買い替えではなく、「使い続ける」前提で素材を選ぶことが、ワードローブの本質です。
最初に決めるべきは、扉の開閉方向と家事動線の取り合いです。朝の身支度で寝室と洗面所を行き来する動線に対し、ワードローブの扉が動線を遮る位置にあれば、暮らしはすぐに窮屈になります。
扉の開閉ひとつで、寝室 6 畳の価値が決まります。
内法 80×135 cm のエレベーターであれば、上下 2 分割・幅 60 cm 扉 4 枚にすれば搬入可能です。事前に管理組合に養生と経路確認の申請を行い、搬入時間は平日 10〜16 時が望ましい。
含水率 9〜11% に統制された無垢材は、湿度 40% 環境でも表面割れを起こしにくい。ただし、納品直後に暖房を 24 時間連続運転すると、含水率が 3% 低下して表面に 0.5 mm の乾燥亀裂が出る可能性がある。
框組扉の人手と、桐引き出しの化粧仕様が価格の下限を規定する。鏡面ガラスや真鍮把手を含めると、240 幅で 780,000〜1,120,000 JPY が現実的なレンジとなる。
集成材の寸法変化を抑え、扉の精度を 0.5 mm 以内に収めるため。金属枠は 20 年後の分離解体を可能にし、リユース価値を高める設計思想の表れでもある。
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